Crosby, Stills & Nash / Crosby, Stills & Nash
『クロスビー・スティルス&ナッシュ』
クロスビー・スティルス&ナッシュ
(1968年)
絶 妙のコーラス・ワークと清廉なアコースティック・サウンドで一世を風靡したユニットのファースト・アルバム。「You Don't Have to Cry」「Lady of the Island」「Helplessly Hoping」「Long Time Gone」。名曲枚挙にいとまなし。未聴の人は損をしてると断言できます。
一度しか咲かなかった美しき夢の花
クロスビー、スティルス&ナッシュ。メンバーの名前をただ並べただけのユニット名には、むろん、意味がある。彼らは、組織形態の変革を訴えていたのだ。
バンドには、かならずリーダーができる。リーダーと非リーダーの関係を突き詰めていけば、それはかならず軍隊形式に行き当たる。だが、60年代後半、ラブ &ピースの時代、その形式こそはもっとも忌むべきものだった。新たな組織の形態、もっと言えば新しい人間関係のありようが求められていたのだ。
3人の才人が、「個」として充実し、それぞれの才能をあますところなく発揮しながら、ひとつの優れたものを構築する。1人より2人、2人より3人。みんなで力を合わせれば、その力は10人分にも100人分にもなる――。
欠陥を指摘しようとすれば、いくらでも指摘することができるだろう。あきらかな理想論だし、はかない夢想だと言ってもいい。だが、その理想論を素直に信じ、実現しようとしたからこそ、この美しく希有な作品、文字どおり夢のような作品ができあがったのだ。
ニール・ヤング入りの次作『デジャ・ヴ』、ライヴ盤『4ウェイ・ストリート』、いずれも大傑作である。いつか、ここで紹介することもあるかもしれない。
だが、彼らは作品を重ねれば重ねるほど、すこしずつ、しかし明らかにこの「夢」から遠ざかっていく。「夢」はこの作品でしか、表現することができなかったのだ。
新世界への旅立ちを歌った楽曲「木の舟/Wooden Ships」。
間奏部でスティーヴン・スティルスの素晴らしいギター・プレイが聴ける。だが一カ所、明らかに音をはずしているところがある。気づかないはずがないし、やり直せないはずがない。だが、スティルスは決してこれを録り直そうとはしなかった。
この時、この瞬間こそが最高だとわかっていたからだ。
必聴度 ★★★★★
名曲度 ★★★★★
名演度 ★★★
感涙度 ★★★★★
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