Revolution Of The Mind / James Brown
『ソウルの革命』
ジェームス・ブラウン
(1971年)
ファンク・ミュージックの発明者にして最大の開発者であるJBが絶頂期にリリースしたアポロ劇場でのライヴ録音、大ファンク盤。JBのタフでドープなファンクがイヤというほど味わえる。ワン&オンリーのJBボーカルの叫びっぷり・神がかりっぷりも凄い。
絶頂期のJBをとらえた熱狂の大ファンク・ライヴ
ジャケットがいい。
牢に入れられたジェームス・ブラウン。
ジェームス・ブラウンは刑務所出身のシンガーだ。彼は16歳のとき、車の窃盗をやって、ブタ箱にブチ込まれている。アメリカでは、少年院は15歳まで。16歳で「監獄」行きになるのだ。
彼の刑期は、最短8年、最長16年というものだった。車の窃盗にしては重い罰だろう。だが、当時のアメリカ南部には、こういう差別まるだしな刑罰がまかり通っていたのである。
刑務所に入ったブラウン少年は、「こんなところに長くいたくはない」と考え、徹底して模範囚であるよう勤めたそうだ。結果として、彼は3年で出所を許され、娑婆に出て音楽活動をはじめることになる。
この頃のエピソードに、おもしろいのがある。
ブタ箱から出たブラウン少年は保護観察を受けている。保護観察下にある人間は、州境を越えることができない。
だが、ブラウン少年は必死で観察官の目をあざむき、州境を幾度となく越えていたのだそうだ。
何のために? むろん、州境を越えてライヴをやるためである。
一説によれば、最盛期のジェームス・ブラウンは年間300回のライヴをやっていたという。それ故、ついたあだ名が「The Hardest Working Man in Show Business」。ショービジネス界でもっとも激しく働く男、である。
JBはライヴでバンドを鍛え、ファンクという音楽を文字どおり「発明」した。
この作品は、「セックス・マシーン」に代表される一連のファンク・チューンを連発し、音楽的にも絶頂期にあったジェームス・ブラウンが、満を持してリリースした大実況中継盤である。
ファンクという音楽のすべてが、ここにはある。
随所に聞かれる観客とのかけ合いは、呪術的ですらある。
すべてを打ち破るJBの声と、タフなリズムによって煽られた観客たちは、日常性を剥奪され、狂ったようにJBの呼びかけに応えている。
呪術の司祭たるJBも神がかっている。ことに、クライマックスで連呼される「ソウル・パワー!」「パワー・トゥ・ザ・ピープル!」という言葉は、単純なだけに迫真力が強い。
アルバムタイトルは「心の革命」。
JBは、本気なのだ。
牢を描いたジャケットにも、その「本気」が表現されている。
この後、JBは傑作「ペイバック」をはじめとしたメッセージ色の強い作品を次々にリリースすることになる。この作品は、その序章でもある。
必聴度 ★★★★
名曲度 ★★★★
名演度 ★★★★★
腰フリ度 ★★★★★
追記:
JBは今でも本気、バリバリの現役である。
それを、先日(3月4日)、東京国際フォーラムで確認してきた。したたかな衝撃を受けた。
ライヴレビューはこちら。
http://ameblo.jp/goatsheadsoup/entry-10009813729.html
追記2:
ジェームス・ブラウンは上記の日本公演と同じ年の暮れ、2006年12月25日、クリスマスにこの世を去った。生涯に3枚のクリスマス・アルバムをリリースしたJBらしいといえば、らしいということになるのかもしれない。
そのニュースを聞いてしばらくは、コメントを出すことができなかったが、その後、若干気持ちの整理もついて、下記の文章をしたためた。私なりの追悼文ということになるのだろうか。
http://goatsheadsoup-musikus.blogspot.com/2007/01/since-youve-been-gone.html
2 comments:
こんにちわ、きくです。
JBはやっぱ、生き神様ですね。
だからこそ、映画「ブルースブラザーズ」で、ジェイクを目覚めさせる司祭の役も説得力があったわけですね。(あれは本当に名シーンでした)
JBといえば「セックスマシーン」(こういう人とまた是非お会いしたい)ですが、実は「マン・オブ・ザ・ワールド」のシブさが好きです。
やあ、きくちゃん、コメントありがとう。
そういや、JBのライヴで、ブルースブラザースのカッコをしてる人がいたよ。
彼も目覚めてしまったのだろうねえ。
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